薄暗い店内には他に憔悴しきった若いカップルがいるだけだ。
「i think that ...」
北欧訛りの英語で彼女は言葉を選びながら囁くように続ける。
水槽にはちいさな魚がすいすい泳ぐ。
テーブルにある青白い飲み物の名前は知らない。きれいにたゆたうがそんなにうまい味なわけでもなかった。
「...you must be kind,and brave.i seem you excuse your weekness with your sophistry.」
「dont use difficult word,please.so,i have little vocabulary.」
「like that...youre good at run away.」
「by japanese,please.」
「臆病 and 脆弱 and 虚勢 and ...」
「ok.i understood.」
魚はプカプカ泳いでいる。ひらひらしながらへらへらしながらこっちをみたりみなかったりして、要領よく漂っている。
「i understood your suck is good at bullying myself.」
時折その口元からは細かな気泡がこぼれる。気泡の粒は魚よりも要領よく漂って、上手に消失していく。彼女は少し笑って北欧訛りで答える。
「yes...but,it knows the other way how to do it.」
目もとが三日月様に細くなる。口元もつりあがる。隙間から白い歯がのぞく。悪趣味なブラックライトが青く彩る。
「dont you want to know that ?」
沼のなかにいる心地よさと背徳。唾が舌の上に溜まる。飲み込む。
「yes,please」
どれだけ舌を絡めようが体を絡めようが人同士はひとつになることができない。そのもどかしさで胸は灼ける。一心に相手の肌にかみつく姿が鏡に映る。水を探すとかげに似ている。砂地の上のとかげ。
耳元に口をよせ、
悪魔のように彼女が囁く。
「こんばんは、タモリです。」
はい、ねすごしたー!
ホテルもナンシーもおあずけー!現実はいつもより一時間遅い起床。あーあ急がないと遅刻だーやってらんねー