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ゆるく、ゆるーくありたいものです

合同会社elegirl代表、岡崎龍夫です。
大学生だった2004年から20年以上つけている思索の記録です。
未来の自分に手紙を書くつもりで書き溜めているため、それほど一般性はありません。

2014年08月

暑い日が続いていたけど、もうすぐ終わる。
朝から夜まで汗をかいて相変わらずてんやわんやしていた日々を経て、ようやく都内に越した。
帰国してずいぶん経ったけれど、ベルリンはきっと、一番好きな季節が終わった頃。冬の支度をはじめる頃。ずっとここにいたいと願う間もなく、時間は進んでいく。

夢の話をしたい。
ベルリンで自分の欲求をいっぱい口にできたからいま此処にいるのだと思う。
色々な出会いに出会えた。そして、色々な人から夢を聞いた気がする。夢見る時間もないほど、毎日忙しない感覚と見ていたい夢がたたかっている。最近は東京の溽暑のような、数ヶ月の中でうだっていた。
先日知り合った人に「きみは何がしたいの?」と聞いたら「わくわくすることがしたい」って回答があって、忘れていた感覚を取り戻した。わくわくするためにこの生活に身を置いたんだった。

とりあえず、アラブの石油王たちに毎朝数通メールで
「あなたと私は関係がないけれど、お金をください」と物乞いをしてみた。
スケールがでかければ物乞いもロマンだ。

アイス・バケツチャレンジに便乗して腐った味噌汁をかぶってみた。
この意味のなさが伝わればいいと思っている。

夏は、いろいろな方々から「おもしろいねー!」と言われながらお酒をおごってもらう機会もある。
営業とかじゃなく、面白いこといおうとしている。俺のバリューはほんとそれだ。金さえくれたらどこにでもいくしドラマをつくってもどってくるので、旅ミッションくれよ。
今は、いろんなプロジェクトに刺さっていて、その規模は違えど、やりたいことがある人の願望は全部かなって欲しい。俺ができるのが例えバジル添える程度のことであっても。人が夢を語る現場にいたい。まあ、自分の力量不足に胃は痛い。

また、いろいろあった夏が終わる。
秋も冬もまたいろいろある。
新天地に着くなり新天地に移るようなくらしだ。やるしかないけど。

 「あらゆる物質、物体は実体がなく空である」という、仏教でおなじみの色即是空という概念がある。
物理学には、物質を構成する「素粒子」は、通常は波動の状態で存在するが、人が観測すると粒子(物質)の状態を示すという「不確定性原理」という考えがある。
 この、色即是空と不確定性原理の関連性に、ずっと以前から興味がある。
 例えば、自分というのはどこからどこまでを指すのだろう?という疑問に対して、仏教でも物理学でも同様に「そこに実体はない」という回答がなされる。我々が実体として認知しているものは素粒子の粒子性の側面だけなのだという。
 なんだか狐につままれたような話だ。仏教はそこから「とらわれるな」と諭す。

 大塚を歩いていたら「空蝉橋」という橋に差し掛かった。明治天皇がそこで蟬の脱殻を見つけたことに由来するんだとか。そういえば最近は雨も多いし、暑さも落ち着いてきていて、蝉の啼鳴も心なしか減ってきているように思う。死骸を目にすることもたまにある。「空蝉」と聞くと、ひと月前に抜殻を抜けた蝉が、さらにその身体を棄てて飛びまわるようなイメージを持つのは俺だけだろうか。

 一日暮らしているだけで、実にたくさんの感情にとらわれて、その都度「かなしみ」とか「いかり」とか「愛」なんていう名前をつけている。けれど実際はそんな名前で括られるほど感情はシンプルなものでもないし色と形を変え続けては揮発していく。言葉というのは概念に甲殻を与えるようなものなんだなあと思った。夏の始まりと終わりはどこからどこまでかということに関しても同じようなことが言えて、本当は夏なんて暦の上で揮発する色彩のひとつだ。

 やはり、一切のものは揮発するし、感傷を帯びた抜け殻が残るんだろう。

 最近は、随所に夏の終わりの気配を感じて、さみしい。思わず撮った写真は抜け殻みたいに思える。帰宅を促す夕刻の鐘を聞きながら公園に佇んでいると、一足先に実体を棄てた空蝉が周りを優雅に飛び回っているような気がした。

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elegirlより電子書籍「羽虫」出版しました。

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川井俊夫という人物の思索の記録です。詳しくは特設サイトをご覧ください。
読み物として面白いのでおすすめです。kindle端末がなくてもkindleアプリで購読できます。協力してくれたみなさん、どうもありがとう。

川井俊夫「羽虫」特設サイト







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