魔法使いが好みそうな月がぷかりと浮かんだ空。魔法のような夜。
闇は果たして気体なのか液体なのか。いつものように耽りながらいつものように帰るのだ。
そしていつものようによろめきゆらめきしている。

こんなきれいな夜でさえ誰かが手首を切っている。
幸運なことに俺は、月の光でアルビノになることもできるのだ。(というより、そもそもアルビノなのだ)痩せた骨や心も見えるだろう。腹部あたりに穴もあるはずだ。風も吹いている。
俺は類を違わず畸形の花で、歪な形状の葉と茎を持ち合わせているのだ。麝香と腐臭と石鹸のにおいのどれもが本物なのだ。珍妙な色の花びらだとも思うけれど、そんなこともないのかもしれない。

目白通りで少女が唄っている。
黒猫もいる。アコーディオンを覚えたら楽しいかもしれない。
少女が踊っている。

魔法使いが好みそうな月がぷかりと浮かんだ空。魔法のような夜
何回だって感電してしまうこころはまだあおく。魔法のような夜ほどあおく。
今日はちゃんと眠ろう。
あしたも大丈夫だろう。