「おう、久しぶり!元気か?」

歩いていたらそう声をかけられた。

顔を見ると偉くやぼったい男がいた。それはちょうどおぎやはぎのおぎとおぎやはぎのやはぎをまぜたような顔だった。俺はその顔におぼえはなかった。

「俺だよ。覚えてないか?」

…まったく覚えがない。
失礼ながらも尋ねてみる。

「すみません。失礼ですがどちら様でしょうか?」

「ほら、オギショウのI股だよ!」

…ますます分からなくなった。
I股?そんな知り合いいないぞ。
そもそも「オギショウ」ってなんだ?
小学校か?商業高校か?
仮にどちらかだとしたらその学校の生徒はみんなおぎやはぎ顔なのか?ううむ…謎は深まるばかりだ。

向こうはひどく感動している様子だ。どうしたものだろう…ここはハムレットでさえ味わったことのない窮地だ。

「すみません…オギショウって、小学校ですか?」

勇気を出してはみたものの何を聞いてるんだ俺は。

「そうだよ!オギ小学校!I股だよ!同級の!」

知らねー。そんな小学校記憶にねー。

「失礼ですが、僕、桜小学校なんですが…」

そうだ。俺は桜小学校。戦前は三郷第七小学校と呼ばれてた歴史ある小学校の卒業生だ。しかし、奴はひるまない。

「じゃあ、I股覚えてない?」

覚えてねー。
つうかそもそもしらねー。

「失礼ですが人違いでは?僕、岡崎といいます。」

ついになのってしまった。

「…そうですか。すみません…」
「いえ…すみません…」

あー!なにも悪くねーのにすみませんしちゃった!!
I股さんはそのままうなだれて帰っていった。俺も若干残念な気持ちが感染した。

ちくしょう。
とんだとばっちりだあ。