頭の中にいつの頃からか女の子が棲みはじめた。

彼女は怠け者らしく、大概は寝るかシンナーを吸うかしている。頭の中でシンナーをやられると僕はよくわからない言葉を吐いたり挙動がおかしくなってしまう。迷惑だ。

彼女は厭世的であるらしく、基本的に僕は毎日憂鬱である。彼女が一日怠けていればいいのだが、こっちには保つべき生活があるのだ。非常に迷惑だ。

僕の聴く音楽にケチをつけるのも厄介だ。

ロックはうるさい。クラシックはたるい。ジャズは気取ってる。ということを言い出すので
「じゃあ、何を聞けばいいんだよ」と尋ねると、
「ZEEBRAを聞けばいいよ。むしろ聞けよ」
と言う。

頭の中のラジカセでZEEBRAを流されると僕は「俺は最強、クソMCぶちのめす」的な歌をいやいや聴く羽目になり、最近じゃだんだん喋る口調もそんな感じになってきた。

彼女が憂鬱だとこっちも憂鬱になるので、彼女には従うしかない。機嫌よくさせておけば、こっちも機嫌がいいので従っていればいい。

ある日彼女が寝転びながら
「ごめんね、勝手に転がりこんで」と呟いた。
「YEAHもう慣れてきたYO」
「迷惑だとは自覚してる」
「お前の真心CHECK IT OUT最強」
「でも、居心地がいいからもう少しいさせて」

そう言って彼女は僕の大脳にしがみついた。

「気にすんなYO」

ぼくらは割とうまくやれてる。

今日も彼女は怠けている。
僕がこの文章を書いている今もシンナーの袋をもって吸い込んであばばばびゃびゃびゃうっひゃひゃひあららららかかががががが千代の富士が千代の富士が千代の富士がいっぱい、千代の富士が忍者になってうわー行進だなあ、うらららららららあばばばば素敵なパレード