「DJやろうと思うんだ。名前を考えてくれないか」
「目標はどこですか?」
「うーん、でかいフェスに出るとか全く興味ないからな。教育テレビに出たいな」
「じゃあ平仮名の、子どもにも親しみやすい名前がいいですね」
「なるほど」
「岡崎さんって正体不明で、神出鬼没なところあるから『おばけ』でどうでしょう」
「他にもいそうだし、怖がられそうだ」
「じゃあ『やさしい』をつけましょう。いいやつではあるんだぞってことで」
「DJやさしいおばけ。いいかも」

「やさしい」を自分で標榜するのは恐縮だが、名前なんて「勇気」みたく、そうなりたい、そうありたいでつけるもんだし。

それから、沢山の音楽を聴いた。その音楽を背景に、歌ったり、踊ったり、酩酊したり、恋をしたり、神を感じたり。
世界には色々な文化があることがわかった。
その膨大な文化の広がりを想像した時、どうしてもその広大さを確かめたくてたまらなくなった。俺も、あんたらの文脈でそれを楽しみたい!
気づいたら異国にいた。

おばけになって15年が経つ。いまでは割と呼ばれている。いつか本当に、生涯を全うするとき、そうあればいいと思っている。

眠れなくて、昔聴いてた音楽を聞き直していた。夜の深淵に引き摺り込んでくれる音楽が好きだった。布団を水中にして、夢を見たんだか、見てないんだか、不明瞭なまま朝を迎えた。